建設業許可|取った後の手続き

建設業者の代表者の変更|建設業許可

企業の歴史の中では、どこかのタイミングで代表者(代表取締役/個人事業主)の交代が必要となります。

ただ、そのタイミングについては、代表者が自分で選べるときとそうでないときがあります。

いずれにしても一番大事なことは、事業が存続していくことだと考えます。

建設業者としても変わりはありません。

しかし、建設業の許可業者が代表者を交代するときには、注意すべきことがあります。

 

建設業の許可を取得するには5つの要件をクリアする必要があります。

・経営業務の管理責任者

・専任技術者

・財産的基礎(金銭的信用)

・誠実性

・欠格要件

特に、経営業務の管理責任者(経管)と専任技術者(専技)が重要です。

こちらで許可要件をくわしく解説しています。

👉財産的基礎要件(金銭的信用)について|建設業許可

👉誠実性の要件について|建設業許可

👉欠格要件の完全ガイド|建設業の許可・取消では要注意

 

この経管と専技の要件は、許可取得の時だけではなく、許可後も継続してクリアする必要があります。

経管や専技がいない状態になると、その時点で許可が失効してしまうのです。

無許可営業になってしまうということです。処分などの対象になってしまいます。

代表者だけが経管や専技を兼務する場合に、交代するタイミングでこのような状態となることがあります。

知らなかったでは決して済まない、代表者の変更にまつわる建設業許可のリスクと対処法を確認しましょう。

 

他にも建設業許可について解説しています。

合わせてお読みください。

👉岡山県で建設業許可を取る人が読む開業完全ガイド

👉役員を変更した場合の手続き|建設業許可

👉業種追加と許可の一本化|建設業許可

 

代表者交代の2つのタイミング

中小建設業者の場合、代表者が経管や専技を兼ねることが多いと思われます。

安定した経営のためには、代表者は少なくとも経管を兼ねるべきだと思います。

できれば、専技も兼務しておいた方がいいと思います。

もし、経営者以外の人が経管であった場合、退職されると手も足も出なくなります。

 

しかし、これは諸刃の剣でもあります。

代表者だけが経管と専技を兼ねる場合、経営が安定する反面そのリスクも大きくなります。

それはなぜでしょうか。

経管も専技も1日の空白もなく継続して存在していなければいけないからです。

代表者交代のタイミングでは、経管と専技が不在となることが時々起こります。

 

代表者交代のタイミングは2つに分かれます。

・急な交代(死亡、欠格要件に該当など)

・世代交代(代替わり/禅譲)

それぞれの場合でどのようなことが起きるのかを確認していきましょう。

 

代表者の急な交代が必要な場合

経管や専技を兼ねる代表者の交代

代表者の交代を急ぐ必要がある場合とは、おおむね次の場合だと思います。

・代表者が事故や病気で急死された場合

・代表者が欠格事由に該当した場合(傷害事件や道交法違反などで処罰された場合)

どちらの場合も、代表者が経管や専技を兼ねているときには、経管や専技が不在となってしまいます。

後継者が決まっていて、経管や専技の要件をクリアしているのであれば何も問題はありません。

そうではない場合に本当に困るのです。

 

・・・特に代表者が急死した場合には、2週間以内に何とかしなければなりません。

1日でも経管や専技がいない状態になると、許可は失効します。

後釜がどうしても必要です。

 

・・・欠格要件に該当した場合は、出勤できるかどうかで大きく違ってきます。

経管も専技も”常勤”が必要だからです。

逮捕され勾留されると”常勤”は無理です。

この場合も2週間以内に後釜を見つけなければ許可を失ってしまいます。

 

まずは、現状でなんとか後釜をすえることができないか検討してみましょう。

 

※欠格要件をこちらでくわしく解説しています。

👉欠格要件の完全ガイド|建設業の許可・取消では要注意

 

どう対処すればいいのか

代表者以外に経管や専技の要件をクリアできる人がいないかどうか探すしかありません。

つぎの順序で探します。

①社内に要件をクリアできる人がいないかを探る

・・・該当者がいた場合は、2週間以内に変更届を提出します。

 

②社外から経管や専技を引き抜く

・・・取締役就任の登記と社会保険への加入を行った上で、2週間以内に変更届を提出します。

 

③執行役員や経営を補佐していた者(大企業の部長、個人事業主の家族従事者)に該当する人を探る

・・・必ず申請先の窓口での確認が必要です。(大企業や個人事業主を救済するための特別ルールです。とても狭き門となります。)

 

④上記の①から③に該当者がいない場合

・・・残念ですが、30日以内に廃業届を提出し、許可のない業者となります。

※④の場合、廃業届を出しておけば再度の許可申請は可能です。

しかし、廃業届を提出しない場合は、許可取消処分を受けることがあります。

最悪の場合、会社と役員全員が5年間許可の取得ができなくなります。

なお、廃業届を提出すると無許可となるので、軽微な工事しか受注できなくなります。

また、いったん廃業し再度許可を受けた場合でも、許可番号は従前のものは使えず、新しい番号となります。

このときに、強引にそのまま営業を続けようとする方がいるかもしれません。

しかし、とても危険ですので絶対にやめてください。

 

役員の変更届をこちらでくわしく解説しています。

ぜひご覧ください。

👉役員を変更した場合の手続き|建設業許可

 

無理をして営業を続けるべきではない理由

名義貸しの大きなリスク

「〇〇会社の社長さんに、名義だけ貸してもらえんか頼んでみちゃろうか・・・」

ふと頭をよぎりそうですが、気をたしかに持ってください。

経管や専技は常勤を求められます。

ですから、他社との兼任はできません。

また、経管や専技は、国土交通省と各都道府県を結ぶデータベースによって情報が共有されています。

複数の会社で二重に登録できませんし、下手に申請を出すと処分を受ける可能性があります。

さらに、名義を貸した者にも処分の可能性がありますので、絶対にやめてください。

 

届出を放置して営業を続けた場合

経管や専技がいない状態にもかかわらず、変更届を提出せずそのまま営業を続けるとどうなるでしょう。

たまたま発覚せずに事業を続けることができていても、5年ごとに許可の更新がやってきます。

このときに変更届の提出がなかったことが判明します。

無許可の状態で営業していたことになりますので、監督処分の対象となるでしょう。

 

また、欠格要件に該当したにもかかわらず放置していた場合は、さらに覚悟が必要です。

欠格要件に該当したことの届出書が未提出の状態となってしまいます。

悪質だと判断されれば、虚偽記載で許可取消となり、5年間は会社と全役員の許可取得ができなくなります。

無理をして事業を継続しようとしても、いいことは1つもありません。

経管や専技が見つからない場合は、いったん廃業届を出し、許可の再取得で再起を図りましょう。

 

世代交代(代替り/禅譲)の場合

企業の代表取締役や事業主の方であれば、後継者について必ずお考えのはずです。

代表者として、次の世代にバトンを渡すことが最後の大仕事ですから当然です。

ご自身でスケジュールを決めてその通りに進められる方もいると思います。

ですが、比較的多いのは税理士さんから提案された節税対策の中でスケジュールを決めるというパターンです。

税金の繰り延べ効果のある生命保険を解約するタイミングで、代表者が引退し退職金を受け取るということが行われます。

このように役員退職金を受け取るタイミングで、代表者を交代するケースが多いのではないでしょうか。

気をつけておかないとこんなことが起こる可能性があります。

役員退職金を支給するために、役員の変更登記は必ずしているはずです。

しかし、建設業の経管、専技の変更届は提出しないままになっている。

そうなるとたいへんです。

経管、専技は1日でも不在の状態ができてしまうと、許可が失効します。

他の場合であれば役所からの指導だけで許されることもあります。

しかし、経管や専技は許可の要件ですので、とても厳格に運用されています。

代表者の交代から2週間以内に変更届が提出されていなければ無許可の状態です。

この状態で税込500万円以上の工事を受注していると、建設業法違反で処分の対象となります。

ですから、建設業の許可業者が代表者の交代を考えるときには、次のポイントを念じてください。

【許可業者の代表者交代のポイント】

後継者が経管と専技の要件をクリアできるようになるまで、代表者の交代はしない。

 

代表者の交代は、計画的に、そして間違いなく許可が継続できる状態で行う必要があります。

では、対策のポイントを確認しましょう。

 

対策と準備がなにより大事

代表者が経管や専技を兼務しているのであれば、できる限り早く対策に着手してください。

世の中、何が起きるか分かりません。

とにかく、ご自身を含め関係する人々の生活を守るため、事業を継続することこそが重要です。

そのために、対策と準備がなにより大事になります。

 

複数の候補者を考えておく

誰を後継者候補にするかについては、それぞれ哲学があると思います。

また、事業を背負っていく人間ですから、厳しい目で選ぶことになるはずです。

そのような厳しい基準の中でも可能な限り、複数の候補者を頭に描いてください。

一人ではなく、できるだけ複数です。

特に専技の候補者は、多ければ多いほど許可業種が増える可能性が拡がります。

 

許可の要件をしっかり確認する

後継者候補は、どんな経験や資格を持っていなければならないのでしょうか。

しっかりと確認しておきましょう。

 

経営業務の管理責任者の場合

経管の要件をクリアするためには、地位と経験が必要です。

・常勤の役員、個人事業主や支配人であること

・最低でも5年以上の経営業務を行った経験を持っていること

※6年以上の経営業務の経験で、全業種をカバーすることができます。

くわしくはこちらをお読みください。

👉経営業務の管理責任者要件|建設業許可で最大のヤマ

 

専任技術者の場合

専技の要件は、次のどれかをクリアする必要があります。

・国家資格

・10年以上の実務経験

・指定学科の卒業+実務経験

・大臣認定(海外での学歴、経験等)

国家資格だけで要件がクリアできるものがあります。

まずは国家資格の取得を検討しましょう。

特におすすめするのは、建築施工管理技士の資格です。

1級であれば17業種、2級(仕上げ)であれば12業種をカバーできます。

10年以上の実務経験の場合は、1業種のみ要件をクリアできます。

指定学科を卒業の場合、大学は3年以上、高校は5年以上の実務経験で1業種クリアです。

※大臣認定はハードルが高く特殊ですので説明を割愛します。

 

専任技術者についてこちらでくわしく解説しています。

👉専任技術者の要件|建設業許可のもう一つのヤマ

👉実務経験で専任技術者になる|建設業許可の要件

 

できるだけ早く必要な経験を積ませること

それぞれ要件を確認しましたが、後継者候補に必要な経験を早く積ませることが必要です。

経管の場合・・・役員として、建設業の経営業務を総合的に行った経験

※資金繰りや技術者や職人の手配、下請の手配などの経験をいいます。

専技の場合・・・実務経験で要件をクリアする場合、現場監督の経験、土工やその見習いの経験など

そのため、後継者候補が決まったら、①取締役に就任させる、そして②経営経験や実務経験を積ませることが大事です。

経管の場合、役員就任後最低でも5年の経験が必要です。

できるだけ早く対策してください。

 

対策のポイント

(法人の場合)

常勤の取締役を2名以上就任させる

※他社からの引き抜きという手もありますが、できるだけ生え抜きをおすすめします。

(個人事業主の場合)

・家族従事者(子供/奥さん)に専従者給与を支給する。

※税務署に「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出し、決算書に毎年計上する。

・支配人の登記を行う。

・法人成りを検討する

※許可の再取得が必要になります。

 

まとめ

代表者が経管や専技を兼ねている中小建設業者には、対策と準備が必要です。

いつでも代表者の交代ができるように準備をしておくということです。

まだ若い社長には、一見面白くない話と思われるかもしれません。

しかし、いろいろなことが起きる可能性が現実としてあるのです。

 

建設業者の代表者の交代には、いろいろな落とし穴があります。

しかし、対策と準備をしておけば、事業を引き継いでいくことができます。

 

ご自身が経営できない状況をイメージしてください。

それでも淡々と事業が継続できることが大事なことである、と私は考えています。

ぜひできるだけ早く対策を考え、準備に着手していただきたいと思います。

 

建設業許可について他にもくわしく解説しています。

ぜひ合わせてお読みください。

👉決算変更届(決算報告)とは|建設業許可

👉軽微な工事とは(許可が不要な工事)|建設業許可

👉一般建設業と特定建設業はどう違うのか|建設業許可

👉兵庫県で建設業許可を取る人が読む開業完全ガイド