建設業法の知識

建設業者と一人親方とのあぶない関係(税金編)

建設業者が一人親方をかかえる場合に気をつけるべき注意点について、2回に分けて確認しています。

こちらの記事を先にお読みになることをおすすめします。

👉建設業者と一人親方とのあぶない関係(社会保険編)

今回は、税金面で気をつけるべき注意点を検討します。

 

建設業においては、社会保険未加入問題に対する取組みが強化されています。

このため、建設業者としては、社会保険に加入することを選択せざるを得ません。

しかし、思いのほか保険料の負担が大きいのです。

そこで、従業員を一人親方として独立させ、社会保険から外すことで保険料負担を軽くする。

このようなケースが増えているようです。

 

しかし、このようなやり方はとても危険です。

偽装請負となります。

実態は労働者や派遣であるのに、工事の「請負」を偽装しているということです。

違法行為として処罰や監督処分などを受け、最悪許可取消となる可能性があります。

また一人親方とは認められず労働者だと判断されると、税金面でさかのぼって追徴課税を受けることにもなります。

 

建設業者と一人親方との間にひそむ、税金面のリスクについても確実に押さえておきましょう。

まずは、一人親方(「請負」)と労働者(「雇用」)のちがいを確認します。

 

建設業許可をくわしく解説しています。ぜひご覧ください。

👉建設業者が社会保険に加入することは義務なのか?

👉許可の有効期限と更新申請について|建設業許可

👉決算変更届(決算報告)とは|建設業許可

 

「請負」と「雇用」のちがい

建設業の一人親方は、通常「請負」契約で仕事を請けます。

一方、労働者は、使用者と「雇用」契約を結んで仕事に従事します。

では、具体的にどのようなところが違ってくるのでしょうか。

 

保護される範囲がまったく異なる

「雇用」契約を結んだ労働者は、労働基準法などの労働関係法令によって保護されています。

労働者(従業員)であれば、次のようなことが法令によって守られます。

・残業時間の制限(通常、1年間の残業時間は360時間と決められています)

・残業手当の支給

・有給休暇の付与

・解雇の制限など(企業は労働者を簡単に辞めさせることはできません)

 

一方、「請負」契約で仕事をする一人親方には、労働基準法などの保護はありません。

基本的にすべて自己責任です。

 

仕事に対する責任が異なる

雇用契約は、労働に従事する見返りとして報酬が支払われることで成立します。

したがって、労働者は、結果にかかわらず労働に従事することによってその責任を果たします。

 

他方、「請負」とは、仕事の完成を請負い、見返りとして報酬を受け取る契約です。

ですから、一人親方は、発注者や元請から指図されることなく、請け負った仕事を完成させることで責任を果たします。

 

仕事に対する責任の取り方が異なる

労働者は、仕事の上で不具合や失敗を発生させても責任は負わず、使用者が責任を負います。

ただし、悪意があったり重大な過失の場合は、責任が生じることがあります。

 

これに対して「請負」の場合、仕事の目的物に不具合(瑕疵)があったり、完成させることができなければ責任を負うことになります。

契約通りに完了しなければ、手直しや損害賠償などが求められます。

 

契約解除の条件が大きく異なる

「雇用」契約の労働者は、労働基準法などによって保護されています。

特に契約解除、つまり解雇については、使用者の都合や正当な理由がなく行うことはできません。

 

しかし「請負」契約では、契約書で定めた事由に該当したときは、契約を解除することができます。

この場合、違約金などの条項があれば、これにしたがって支払いが必要となることがあります。

 

偽装請負

偽装請負とは

上記のように「請負」と「雇用」はまったく異なる契約です。

ですから、実態は労働者であるのに一人親方として独立させることには、大きな問題があります。

また、他の業者に「請負」契約で仕事を発注しているが、実態は労働者を供給や派遣するだけの状態になっている場合も同様です。

これらを「偽装請負」といいます。

なお、建設業務では派遣が禁止されています。

 

偽装請負が疑われるポイント

「偽装請負」が疑われる1番のポイントは「誰が仕事に対して指揮命令を行っているのか?」ということです。

・一人親方なのに、建設業者の業務指図によって業務を行っている、従事する時間が決められている

・請負業者側が、いっさい現場に姿を見せず、現場では他の業者(発注元)が指揮監督している

上記に該当する場合は、偽装請負の疑いが強いと言えます。

特に、労働者が現場で「他の会社の責任者」から指揮命令を受けることは、重大な違反行為となります。

 

偽装請負とされたときの罰則

偽装請負とみなされたときは、職業安定法や労働者派遣法などの労働関係の法令に違反するおそれがあります。

最悪の場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられます。

 

建設業者が、上記の刑罰を受けると欠格要件に該当することになり、許可が取り消されます。

また、刑罰を受けなかったとしても、指示処分や営業停止などの監督処分を受けることがあります。

 

また、これらの罰則や処分とは別に、税金の面であとあと追徴課税を受けることがあります。

それでは、税金面でのリスクを確認しましょう。

 

一人親方が労働者とされたら税金はどうなる?

「外注費」か「給与」か

建設業者が、一人親方に報酬を支払う場合「外注費」で処理されることがほとんどです。

「請負」契約にもとづいて、契約ごとに完成した仕事への報酬として支払うこととなります。

 

一方、労働者(従業員)に支払うのは”給与”ですから「給料手当」あるいは「賃金」で処理されます。

ほとんどの場合、働いた時間や日数にもとづいて給料が計算されます。

 

「外注費」と「給与」では税金が異なる

「外注費」か「給与」かによって、建設業者の次の2つの税金が違ってきます。

①消費税の計算

②源泉所得税の天引き(年末調整の計算)

 

①消費税の計算

「外注費」と「給与」では消費税の取扱いが違います。

・「外注費」・・・消費税がかかります。

・「給与」・・・消費税は対象外です(消費税はかかりません)。

ですから、建設業者の消費税の計算も違ってくるのです。

 

例)請負金額:22万円(税込)、外注費11万円(税込)の場合

【外注費】

請負金額22万円にかかる消費税は、税率10%ですから2万円となります。

一方、外注費11万円のうち消費税は1万円ですね。

この場合、消費税の納税額は、2万円-1万円=1万円 となります。

 

【給与】

給与には消費税がかかっていません。

ですから、給与として11万円支払っても消費税は0円です。

消費税の計算上、控除できる消費税がありませんので次のようになります。

消費税の納税額は、2万円-0円=2万円 になるわけです。

「外注費」にした方が「給与」にするより、消費税として納める額は少なくなります。

これが、税金面でも偽装請負に走ってしまいがちとなる理由です。

 

②源泉所得税の天引き(年末調整の計算)

もう1つの違いは、源泉所得税の天引きが必要かどうかということです。

・「外注費」・・・源泉所得税の天引きは不要

・「給与」・・・源泉所得税を給与から天引きします

「給与」の場合、毎月の給料や賞与から源泉所得税を差し引き、翌月10日までに納付を行います。

そして、年末には、建設業者が従業員の年末調整を行うことになります。

人数が多いと結構手間のかかる作業です。

 

一方、「外注費」の場合は、建設業者は何もする必要がありません。

一人親方が自分で確定申告を行うことになるのです。

こちらも建設業者にとっては「外注費」にしておくほうが楽ですね。

対象者 税目 「外注費」 「給与」
建設業者 法人税(所得税) 経費で落とせる(消費税を除いた本体価格) 経費で落とせる(支払総額)
消費税 かかった消費税を控除できる 消費税はかからない(控除できない)
一人親方(従業員) 所得税 自分で確定申告する(一人親方の場合) 建設業者が源泉徴収し年末調整する(牛業員の場合)

 

「外注費」と「給与」の判断基準

一人親方と労働者(従業員)の税金の計算における判断基準を確認しましょう。

つまり、「外注費」と「給与」の判断基準です。

判断についてはあくまでもすべての事項を総合的に判断することになります。

ⅰ)仕事は請負契約にもとづいているか

ⅱ)他の人が替わってできる仕事かどうか

ⅲ)報酬支払者から作業時間を指定されるなど時間的なしばりがあるか

ⅲ)仕事をするときに、建設業者の指揮監督を受けるかどうか

ⅳ)まだ引渡しが済まない竣工した工作物が不可抗力のため滅失したときでも、報酬の請求をすることができるかどうか

ⅴ)建設業者から材料や機械・道具などを与えられているかどうか

なお、報酬の計算が出来高によらず、労働量(時間単価による計算)に応じて計算され支払われる場合は、「給与」に該当するとの判例があります。

最終的には、税務調査での事実認定で決まります。

いかに、外注費であることの証拠や事実を積み上げておけるかがカギになるでしょう。

 

そういう意味で、次のような証拠や事実は欠かせないと考えます。

①請負契約書を交わしている

②一人親方が請求書を発行している

③一人親方が確定申告をしている

④一人親方が自分で労災に加入している

⑤本人が一人親方であることに納得している

とにかく慎重な判断が必要です。

できれば税理士さんと相談されることをおすすめします。

 

外注費が給与とされたらどうなる?

最後に、偽装請負とみなされた場合、つまり、外注費が給与とされた場合はどうなるのかを確認しましょう。

外注費が給与とされたときには、建設業者に次の追徴課税が行われます。

【消費税】

「外注費」にかかる消費税として控除していた全額が追徴されます。

たとえば、一人親方に支払った1年間の金額が330万円だった場合、30万円の消費税が追徴されます。

これには、加算税や延滞税がプラスされることになります。

脱税の場合、最高7年間さかのぼって課税されます。

 

【源泉所得税】

「給与」とされると、本来源泉徴収義務があったことになります。

一人親方本人が、確定申告と納税をちゃんと済ませていれば問題はありません。

これができていないと、建設業者が源泉所得税として納付する場合が多いようです。

十分ご注意ください。

 

まとめ

社会保険に加入すると、その負担の大きさに驚くことになります。

支払った給与の約15%を建設業者が負担することになります。

従業員本人の負担と合わせると給与の30%強にもなります。

その上、「給与」とすると消費税の負担も増え、源泉徴収や年末調整も必要です。

 

これら社会保険料や消費税の負担を何とかしたいと思うのは人情だと思います。

気持ちはよくわかります。

しかし、ここはぐっとこらえましょう。

「労働者(従業員)」であるのに、無理に「一人親方」として独立させるのは避けてください。

代償が大きすぎます。

 

ぜひ「法定福利費を内訳明示した見積書」を使って、できるだけ保険料を請負金額で確保しましょう。

「法定福利費を内訳明示した見積書」をこちらでくわしく解説しています。

👉法定福利費を見積書に記載できる?|建設業法

 

ほかにも建設業許可について解説しています。

👉経営業務の管理責任者を変更する手続き|建設業許可

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