建設業法の知識

主任技術者と監理技術者の違い|建設業法

建設業許可を取ると、許可を受けた業種については、金額に制限なく工事を受注することができます。

これと引き換えに、許可業者には守るべき義務が背負わされます。

 

守るべき義務の1つに、工事現場に工事に関する技術のプロである”技術者”を置かなくてはならない、というものがあります。

主任技術者や監理技術者と呼ばれる技術者を、各工事現場に配置しなければなりません。

主任技術者は、小規模な工事や下請工事の現場に配置される技術者です。

一方、監理技術者は、大規模な工事に配置され、工事全体を統括する技術者です。

 

技術者の配置には、さまざまなルールが決められています。

ルールが守られていないと、監督処分や罰則を受けることになります。

技術者とそのルールについて正しく理解して、建設業法に違反しないようにしたいものです。

今回は、主任技術者と監理技術者のちがいと技術者のルールについて解説いたします。

それでは、順番に確認していきましょう。

 

建設業許可について、さまざまな解説を行っています。ぜひご覧ください。

👉岡山県で建設業許可を取る人が読む開業完全ガイド

👉許可の有効期限と更新申請について|建設業許可

👉決算変更届(決算報告)とは|建設業許可

👉建設業法の処分・罰則を理解する完全ガイド

 

なぜ技術者の配置が必要なのか

建設工事はさまざまな種類の工事が、複雑に組み合わさって施工されます。

また、下請も含めた多くの業者による工程があり、全体を総合的にマネージメントすることが必要です。

橋やダム、道路、ビル、マンションなどを造りあげるには、高い技術力と管理能力が求められます。

このような特徴をもつ建設工事が適正に施工されるためには、工事の技術面を知っている者に管理させなければいけませんよね。

そのため、工事の施工に関して一定の経験や資格を持つひとを、工事現場に配置することを義務付けているのです。

主任技術者・監理技術者とは

技術者の配置が必要とされない工事

工事現場によっては、技術者を配置しなくてもいいという現場があります。

主任技術者と監理技術者(この記事では「監理技術者等」と呼びます)などの技術者を配置する必要がない工事です。

それは、許可を受けていない業者が行う軽微な工事の現場です。

逆にいえば、許可業者が行う工事の現場には、かならず技術者を置かなくてはならないということです。

 

ではどんな工事にどんな技術者を置かなければならないのでしょうか。

 

主任技術者とは

許可業者は、工事金額の大小や元請か下請かにかかわらず、建設工事の現場に主任技術者を置く必要があります。

 

許可業者であれば、各工事現場にはかならず主任技術者を配置しなければなりません。

許可の有無にかかわらずすべての工事において、また税込500万円以下の軽微な工事であっても、主任技術者の配置義務があります。

主任技術者になるには、一般建設業の専任技術者の要件である資格や経験を持っていることが必要です。

 

監理技術者とは

一方、監理技術者の配置は、特定の場合にだけ求められています。

特定建設業者が元請として税込4,000万円(建築一式は6,000万円)以上の工事を下請けさせる場合には、監理技術者を配置しなければなりません。

 

このような工事の場合、元請からは監理技術者を、下請からもそれぞれ主任技術者を配置する必要があります。

監理技術者になるには、特定建設業の専任技術者の要件をクリアするための資格や経験が必要となります。

 

主任技術者と監理技術者との役割の違い

 

主任技術者と監理技術者とでは、役割(職務)がどう違うのかを確認しておきます。

 

主任技術者の役割

主任技術者には、次のような役割(職務)を果たすことが求められます。

・【工事の施工計画の作成】

・・・工程・安全・品質管理計画、施工体制、発注者との協議など

 

・【工程の管理】

・・・工事全体の把握(手順・段取りの調整、指導、工程変更があったときの適切な対応)

 

・【品質管理】

・・・建築物・工作物の品質を確保、仮設物、工事用の資材や機械などの管理

 

・【安全管理】

・・・通行人などへの公衆災害や労働災害(労災)の防止

 

・【労務管理など】

・・・労働者・下請業者などの工事現場への入退場の管理、近隣住民への対応など

 

監理技術者の役割

監理技術者には、主任技術者の役割に加えて、

①下請け業者の指導・監督

②工事の規模が大きくなるため、複雑な工程管理など高度な管理をおこなう

など総合的な役割を果たすことが求められます。

 

元請工事か下請工事かで変わる役割

監理技術者等は配置された工事が、元請工事なのか、下請けなのかによってもその役割が変わってきます。

元請工事に配置される監理技術者・主任技術者であるのか、下請の主任技術者なのかでその役割が違います。

・【元請の監理技術者・主任技術者】

・・・請け負った工事全体を統括した施工管理を行います。

 

・【下請の主任技術者】

・・・請け負った範囲の工事の施工管理を行います。

こちらを参考にしてください。

近畿地方整備局:建設業法に基づく適正な施工体制と配置技術者より引用

 

主任技術者・監理技術者になるための要件

では、主任技術者・監理技術者になるためには、どうすればいいのでしょうか。

それぞれ確認してみましょう。

 

主任技術者の資格要件

主任技術者の資格要件は、一般建設業の場合に営業所におく専任技術者と同じです。

ⅰ)高校、専修学校の指定学科卒業+実務経験5年以上

ⅱ)大学、高専の指定学科卒業+実務経験3年以上

ⅲ)実務経験10年以上

ⅳ)1級、2級の国家資格(一部の資格には実務経験が必要です)

ⅴ)大臣の特認(海外での学歴や実務経験)

 

監理技術者の資格要件

監理技術者の資格要件は、特定建設業の場合に営業所におく専任技術者と同じです。

ⅰ)1級の国家資格

ⅱ)主任技術者の資格+元請として4,500万円以上の工事を指導監督した2年以上の実務経験

ⅲ)大臣の特認(海外での学歴や実務経験)

※指定建設業の場合は、ⅰ)1級の国家資格者であるか、ⅲ)大臣の特別認定者であることが必要です。

指定建設業・・・土木工事業・建築工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・電気工事業・造園工事業

 

こんな技術者の配置はアウト

技術者は、工事を請負った企業と直接的かつ恒常的な雇用関係が必要とされています。

具体的には、次のような技術者を配置しても配置したことにはなりません。

建設業法違反となりますので、監督処分や罰則の対象となります。

かならず自社の正社員などを配置しなければならないのです。

・いわゆる名義借りの状態である技術者

 

・必要な資格要件を満たしていない場合

 

・在籍出向者や派遣社員など

 

・一つの工事にだけスポットで雇用された技術者など

 

※退職後に再雇用や継続雇用されている方は、技術者として配置することができます。

 

現場ごとに専任が必要とされる場合

現場に専任すべき工事とは

工事1件の工事金額が税込3,500万円(建築一式は7,000万円)以上の公共性のある重要な建設工事に配置する監理技術者等は、工事現場に専任でなければなりません。

 

主任技術者であっても監理技術者であっても専任が必要です。

専任とは・・・その現場の職務のみを常時継続的に行うことをいいます。他の現場とのかけ持ちはできません。(監督処分の対象)

※必ずしも工事現場に常駐することを必要とはしません。

※公共工事、民間工事を問わず戸建て住宅以外のほとんどの工事が該当します。

※技術者の専任は、下請工事であっても必要となります。

 

なぜ専任が必要か

多くの人が利用する規模の大きな工作物の建設工事であり、一定以上の工事の品質を確保するために必要とされます。

 

工事現場に専任が必要な期間

元請工事に専任で配置された監理技術者等は、基本的にその工事の工期の始めから終わりまでが専任が必要な期間となります。

しかし、つぎの期間では専任を必要としません。

【元請の場合】

元請工事における専任が必要な期間とは、つぎの4つをいいます。

①現場での施工に着手するまでの期間

②工事を全面的に一時中止している期間(自然災害など)

③工事完成後の期間

④工場での製作のみが行われている期間(橋梁・ポンプ・エレベーター・配電盤など)

【下請の場合】

下請工事は、施工がこま切れに行われることが多いという特徴があります。

このことから、下請工事が実際に施工されている期間だけに専任が必要とされます。

中国地方整備局:建設業法に基づく適正な施工体制についてQ&Aより引用

なお、専任が必要なそれぞれの工事の工期が重なっている場合は、注意が必要です。

北陸地方整備局:建設業者のための建設業法より引用

 

例外として2以上の工事を兼任(兼務)できる場合

例外として専任の技術者が、2つ以上の工事を兼任できるのは、つぎの2つのケースです。

 

ⅰ)主任技術者のみ兼任できるケース

・・・公共性のある重要な工事のうち密接な関係のあるものを、同一の場所や近い場所で施工する場合

 

ⅱ)主任技術者・監理技術者が兼任できるケース

・・・次の①②の両方を満たす場合は、1つの工事とみなして全体を管理することができます。

①工期が重なる2つ以上の工事であること

②それぞれの工事の対象となる工作物等に一体性が認められるもの

 

くわしくはこちらをご覧ください。

 

技術者の工期途中での交代

工期の途中で技術者が変わることは、工事の適正な施工に悪影響を及ぼすと考えられています。

主任技術者や監理技術者の途中交代は、最小限にする必要があります。

そこで、監理技術者等の交代は、次のようなやむを得ない場合に限られています。

・死亡

・けがや病気による療養

・出産

・育児

・介護

・退職

・請負業者の責任ではない理由で、工事が中止したり、大幅な変更で工期が延びた場合

・橋梁、ポンプ、配電盤など工場での製作が必要なものを、工場から現場に動かすとき

・1つの工事の工期が数年となる場合

どの場合であっても、工程上の切りのいいところで行うこと、交代する技術者の力量に大きな差がないことなどが求められています。

 

監理技術者資格者証

監理技術者として工事に専任でたずさわる人は、次の2つを満たすことが求められます。

①「監理技術者資格者証」の交付を受けていること

②監理技術者講習を受けていること

①「監理技術者資格者証」の交付を受けていること

②監理技術者講習を受けていること

監理技術者が工事現場で仕事をするときには、常に「監理技術者資格者証」を携帯しておかなければなりません。

そして、発注者から請求があったときには、資格者証を提示する必要があります。

・監理技術者資格者証の交付は、次の機関で行っています。

(一財)建設業技術者センター TEL:03-3514-4711

・監理技術者講習を実施している機関

こちらをご覧ください。

👉国土交通省:監理技術者講習の実施機関一覧

 

まとめ

建設業の許可を取得した後には、さまざまな義務が待ち受けています。

その中の1つが、工事現場への主任技術者や監理技術者などの技術者の配置義務です。

適正な施工を行う上でとても重要な義務ですから、監督官庁の関心はとても高くなっています。

 

建設業の許可業者は、毎年、事業年度終了後4か月以内に決算変更届(事業年度終了報告)を提出する必要があります。

この中の「工事経歴書」に工事の実績を記載しますが、一緒に技術者の情報も記載することが求められます。

岡山県では、決算変更届の工事経歴書から、技術者の配置義務違反が発覚するケースが増えているとのことです。

決算変更届や工事経歴書について解説しています。ぜひ、あわせてご覧ください。

👉決算変更届(決算報告)とは|建設業許可

👉工事経歴書と配置技術者(決算変更届)|建設業許可

👉工事経歴書と業種の振り分け(決算変更届)|建設業許可

👉工事経歴書の書き方(決算変更届)|建設業許可

 

監理技術者等の配置義務のルールを正しく理解して、正しく配置するようにして下さい。

もし、不安があるようでしたら、監督官庁や行政書士に相談するようにしましょう。

 

ほかにも建設業許可についてくわしく解説しています。

👉経営業務の管理責任者の要件|建設業許可で最大のヤマ

👉専任技術者の要件|建設業許可のもう一つのヤマ

👉役員を変更した場合の手続き|建設業許可